上空に高圧線が通っている土地の相続税評価額

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平野部・山間部に限らず、2つの鉄塔を結ぶ高圧線(送電線)が通っている地域があります。このような高圧線の下にある土地は、その利用に様々な制限が設けられていて、他の土地と比較して相対的に売買価格が低くなる場合があります。

相続財産としての土地の評価額も減額されますので、今回は高圧線下の土地の評価方法についてお伝えします。

土地の利用に様々な制限が設けられる

高圧線下の土地には「地役権」が設定されている場合があります。地役権は「他人の土地を自己の土地の便益に供する権利」と定められていて、地役権者は他人が所有している土地を自身の土地にとって有効利用できる権利となります。

高圧線下の土地に地役権を設定する場合には、所有者の土地全体ではなく、上空に高圧線が架かっている部分の土地のみに設定されます。

地役権が設定された場合、電力会社等の地役権者は高圧線の保全等のために土地に立ち入ることが可能となり、土地の所有者は高圧線の支障となる竹木の植栽等が出来なくなる他、高圧線から一定距離の範囲内の建造物構築の禁止や危険物の製造・貯蔵の禁止等、土地の利用に様々な制限が課せられることになります。

このような制限がある土地については「区分地上権に準ずる地役権」として評価をします。

区分地上権とは、「工作物を所有するために地下又は空間の上下に範囲を定めて設定する地上権」で、例えば鉄道・道路等が土地の地下を通っている場合に、その空間部分に設定されている権利です。

このような土地は建物を建築する際に構造・用途・荷重等の制限が設けられ、土地の評価額が下がります。この区分地上権と同様に、地役権が設定されている場合も評価額を減額できるます。なお地役権が設定されていなくても、上空に高圧線が架かっている場合は評価減の対象となります。

地役権の調査・確認方法

地役権が設定されているか、また評価額を減額できるかの確認には主に次の4つの方法があります。

1.現地での確認
まずは現地で上空を見上げ、高圧線が土地の上に架かっているかどうかを確認します。付近に鉄塔があれば掲示板等に会社名や連絡先等が記載されている場合がありますので、地役権の設定や建築制限等の有無を確認することができます。

2.全部事項証明書での確認
地役権が登記されている場合には全部事項証明書の「乙区」にその内容が記載されています。

3.契約内容等の確認
高圧線下の土地は所有者が電力会社と「線下補償契約」を行い、補償料を受け取っています。その場合には契約書や土地のどの部分に高圧線が架かっているかを確認できる図面があり、契約内容や評価減の対象となる土地の地積等が確認できます。

ただし所有者と電力会社間の契約の場合には登記は行われないため、全部事項証明書では確認することができません。

4.路線価図での確認
土地が路線価地域にある場合には路線価図で確認することも可能です。路線価図には路線価の他に「鉄塔」のマークが記載されていますので、鉄塔間を結んだ直線上に土地があれば高圧線下の土地となる可能性があります。

どのように評価額を計算する?

区分地上権に準ずる地役権の評価は、路線価地域と倍率地域で方法が異なります。

1.路線価地域の評価方法
・宅地の自用地評価額-区分所有権に準ずる地役権の価額(※1)

※1 区分所有権に準ずる地役権の価額:宅地(高圧線下にある土地部分)の自用地評価額×区分地上権に準ずる地役権の割合(※2)

※2 区分地上権に準ずる地役権の割合
家屋の建築が不可の場合:50%又は借地権割合の高い方
家屋の構造・用途等に制限を受ける場合:30%

高圧線下にある土地の部分については、「30%・50%・借地権割合」のいずれかの割合だけ評価額が下がり、その評価額を全体の自用地評価額から差し引くことができます。

2.倍率地域の評価方法

倍率地域の場合には、固定資産税評価額を基に土地の評価を行いますが、固定資産税評価額に高圧線下にある土地として価値の低下が、反映されている場合といない場合がありますので、近隣の土地と比較して反映されているかどうかを確認する必要があります。

・反映されている場合
(近隣の標準宅地×地積×倍率)-区分所有権に準ずる地役権の価額(※1)

・反映されていない場合
(固定資産税評価額×倍率)-区分所有権に準ずる地役権の価額(※1)

このように高圧線下にある土地についてはその部分の評価額が下がり、土地全体の評価額から控除することができます。